まず「2Dで十分に見える」典型パターン

製造現場で板取りを考えるとき、多くの場合、最初に目が行くのはXY平面の配置です。

  • 母材の上面に部品を並べて、スキマをできるだけ減らす
  • 面積ベースの歩留まり(使用面積 / 母材面積)を指標にする
  • 「もう1個入らないか」「回転させたら入るか」を手作業で試す

これは板取りの基本であり、部品の厚みが1〜2種類であれば、この2Dの考え方で十分に機能します。Excelで管理している現場でも、面積方向の最適化はある程度できているケースが多いでしょう。

しかし、厚みの種類が増えてくると、面積歩留まりは良いのに、体積で見ると母材のかなりの部分が使えていないという状況が起きます。これが「面積歩留まりの錯覚」です。

板金加工では、板厚は母材選択の条件になりやすい

板金加工の世界では、板取りと厚みの関係はブロック材とは異なります。

板金加工の一般的なフローでは、まず必要な部品の材質と板厚に合わせて定尺材を発注します。たとえば、厚み1.0mmのSPCC材と厚み2.0mmのSUS材が必要なら、それぞれの板を別々に仕入れます。

その後の板取りは、同じ板厚の母材に対して、XY平面上で部品をどう配置するかという2Dの最適化問題になります。レーザー加工機やタレットパンチで切り出す場合、切断は板厚の全体を貫通するため、1枚の板から異なる厚みの部品を切り出すことは通常ありません。

もちろん、板金向けの本格的なネスティングソフト(SigmaNESTやProNestなど)も板厚情報を扱います。しかしそれは、板厚ごとに母材を振り分け、それぞれの母材内で2D配置を最適化するという処理です。同一母材内で厚み方向をどう切り分けるかという問題は、板金加工では基本的に発生しません。

ブロック材加工では、厚み方向の切り分けが歩留まりを左右する

一方、ブロック材(石材・樹脂ブロック・木材パネル・金属ブロックなど)の加工は、事情がまったく異なります。

たとえば、厚み150mmの母材ブロックから、厚み50mmの部品群と厚み80mmの部品群を切り出す場面を考えてみてください。バンドソーやパネルソーで厚み方向に切り分けるため、1つの母材ブロックから異なる厚みの部品を切り出すのは、ごく一般的な作業です。

このとき、歩留まりに影響するのはXY平面の配置だけではありません。

面積歩留まりだけを見た場合

各層(同じ厚みの部品をまとめた面)のXY配置が良ければ、面積歩留まりは高く見えます。しかし、厚み50mmの部品だけで1ブロックを使い、80mmの部品だけで別のブロックを使うと、それぞれのブロックで厚み方向に大きな余りが出ます。

体積歩留まりで見た場合

50mmの部品群と80mmの部品群を1つの母材(150mm厚)にまとめれば、厚み方向の余り(残り20mm、実際にはさらに切り代が加わります)を最小限に抑えられます。使用するブロック数も減り、材料費が下がります。これが「厚み方向の最適化」の効果です。

なお、実際の加工ではノコ刃の厚み(切り代・カーフ)が削り取られるため、切り代を考慮した上での厚み配分が必要です。LayerNestでは切り代をパラメータとして設定でき、自動計算に反映されます。

板金加工では板厚ごとに母材を完全に分けて考えるのが自然ですが、ブロック材では「どの厚みの部品群を同じ母材にまとめるか」という組み合わせ自体が、歩留まりを大きく左右する意思決定になります。

ブロック材で起きる「2.5Dの壁」:組み合わせ爆発と属人化

厚み方向の最適化が重要であることは、経験のあるベテラン作業者なら直感的に理解しています。実際、多くの現場では、厚みの組み合わせを考えながら手作業で板取りを行っています。

しかし、ここに「2.5Dの壁」があります。

壁 1

組み合わせが爆発する

厚みが3種類以上、部品が50種類以上になると、「どの部品をどのブロックに割り当て、各ブロック内でどう積層するか」の組み合わせは天文学的な数になります。XY平面の配置だけでも難しいのに、それにZ方向の層分け(どの厚みを同じブロックにまとめるか)が掛け合わさるためです。

壁 2

判断がベテランに依存する

「この厚みの組み合わせならブロック数を減らせる」「この部品は次のオーダーと合わせたほうが効率がいい」――こうした判断は、長年の経験がないとできません。結果として、板取りの品質が特定の担当者に依存し、その人がいないと歩留まりが下がるという属人化が起きます。

壁 3

再現性がない

同じ部品リストを渡しても、担当者によって結果が変わります。見積時の板取りと実加工時の板取りが一致しない、ということも珍しくありません。材料費の見積根拠があいまいになり、利益管理にも影響します。

Excel/手計算で破綻しやすいケース

Excelや手計算で板取りを管理している現場では、以下のような条件が重なると急に対応が難しくなります。

条件 Excelでの対応 問題
厚みの種類が3つ以上 厚みごとにシートを分けて管理 厚みの組み合わせ(積層)の最適化ができない
部品数が50種類以上 大きい部品から順に手で配置 配置の良し悪しが担当者依存になる
複数オーダーのバッチング オーダーごとに別々に板取り オーダーをまたいだ母材共有の最適化ができない
急な部品追加・変更 最初からやり直し 計算のやり直しに時間がかかる

いずれも、XYの2D配置だけなら何とかなる場面です。しかし、厚み方向の組み合わせまで含めると、Excelのセル(2次元)では原理的に表現しきれない問題が残ります。

→ Excelでの板取り計算の限界について、さらに詳しくはこちら

2D・2.5D・3Dネスティングの使い分け

ネスティングソフトには、対象とする問題の次元に応じて3つのタイプがあります。

2Dネスティング 2.5Dネスティング 3Dネスティング
最適化の対象 XY平面の配置 XY配置 + 厚み方向の積層 XYZ空間の配置
対応形状 任意形状(多角形・異形) 矩形(長方形)専用 任意の3D形状
主な用途 板金・レーザー加工 石材・樹脂・木材・金属ブロック CAM連携・5軸加工
厚み方向の最適化 なし(板厚は振り分け条件) 自動最適化 あり(体積ベース)
価格帯 無料〜数十万円 約30万円〜 100万円〜数百万円

板金やレーザー加工では、板厚ごとに母材を振り分けた上で2D配置を最適化するのが主流です。3Dネスティングは異形形状やCAM連携まで対応しますが、矩形ブロック材の板取りには機能が過剰で、コストも高くなります。

厚みの異なる矩形部品を扱うブロック材加工では、2Dでは機能不足、3Dでは過剰。この中間のニーズに応えるのが2.5Dネスティングです。

→ 2D・2.5D・3Dネスティングの違いを詳しく比較する

LayerNestでできること、できないこと

LayerNestは、厚みの異なる矩形部品をブロック材から効率よく切り出すための2.5Dネスティングに特化したソフトウェアです。

XY配置と厚み方向の積層を同時に自動最適化

「どの部品をどのブロックにまとめ、各ブロック内でどう積み重ねるか」を自動計算。面積だけでなく体積ベースの歩留まり(体積歩留まり)で評価します。

Excel/CSVの部品リストをそのまま入力

品番・幅・高さ・厚み・数量の列があれば、現在お使いのデータをそのまま読み込めます。

ギロチンカットモード対応

パネルソーやバンドソーで実際に切断可能な配置に制約できます。最適化結果がそのまま加工手順になります。

DXF・PDF・CSVで結果を出力

CAD連携用のDXF、加工情報付きPDF(見積根拠に)、集計CSV、トレーサビリティCSVに対応。

完全オフライン・Windows専用

インターネット接続不要。外部接続が禁止された工場内PCでもそのまま使えます。

一方で、LayerNestは以下には対応していません。

  • 多角形・異形形状の部品:矩形(長方形)部品専用です
  • 複雑な3D形状の干渉判定:2.5D(XY + 厚み)に特化しており、3D CAD/CAM連携は対象外です
  • 端材在庫の自動管理:加工後に残った端材を在庫として再利用する管理機能はありません
  • 複数の母材サイズの混在最適化:現バージョンでは単一の母材サイズに対して最適化します

対象を絞ることで、厚み違いの矩形部品というブロック材特有の問題に対して、シンプルかつ高速に結果を出せる設計になっています。

同じ部品リストで、体積ベースの歩留まりを比較してみる

「面積歩留まりは悪くないのに、ブロック数が減らない」「厚み方向に余りが出ているのは分かっているが、組み合わせを考える時間がない」。そう感じている現場であれば、まず今お使いの部品リストをLayerNestに読み込んで、体積ベースの歩留まりを確認してみてください。

面積だけを見ていたときには見えなかった改善余地が、数値として見えるようになります。たとえば、月間の材料費が100万円の現場で体積歩留まりが5〜10%改善すれば、年間60〜120万円の材料費削減につながります。

今お使いの部品リストで試してみませんか?

30日間の無料体験版で、ExcelやCSVの部品リストを読み込んで結果を確認できます。クレジットカード不要、インストールするだけですぐに使えます。

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Windows MSIインストーラー(約61MB)

※ 本ソフトは矩形(長方形)部品専用です。多角形・異形形状には対応していません。

よくある質問

板金向けネスティングソフトも板厚を扱うのでは?

はい、板金向けソフトも板厚情報を扱います。ただし、多くの場合は「板厚ごとに母材を振り分ける」前処理として使われ、同一母材内では2D配置の最適化が中心です。ブロック材のように、1つの母材から異なる厚みの部品をどう切り分けるかというZ方向の最適化とは、問題の性質が異なります。

Excelで板取り計算している場合、どこから限界になりますか?

厚みの種類が3つ以上、部品数が50種類以上になると、組み合わせの爆発により手作業やマクロでは対応が困難になります。具体的な限界事例についてはExcelでの板取り計算の限界で詳しく解説しています。

3Dネスティングソフトとは何が違いますか?

3Dネスティングは異形の3D形状とCAM連携を前提とし、価格も100万円〜が一般的です。LayerNestは矩形部品の厚み方向の積層最適化に特化した2.5Dネスティングで、より軽量・低コストです。詳しい比較は2D・2.5D・3Dネスティングの違いをご覧ください。

どんな現場ならLayerNestが向いていますか?

厚みの異なる矩形部品を、石材・樹脂・木材・金属などのブロック材から切り出している現場に向いています。特に、部品の種類が多い、厚みのバリエーションが3種類以上ある、複数のオーダーをまとめて板取りしたいといった条件がある場合に効果が出やすくなります。逆に、厚みが1種類で部品数も少ない場合はExcelや手計算でも十分対応できます。

→ 手計算・Excel・専用ソフトの比較と導入判断のポイント

→ ネスティングソフトとは?基本から解説

→ 板取り・切り出しとは?製造現場での意味・計算・効率化のすべて

→ 素材別・板取り歩留まり改善ガイド